事例紹介:欧州特許庁での異議申立ておよび欧州各国での関連訴訟

課題

当事務所のクライアントは、米国に拠点を置く多国籍企業で、欧州の競合他社から特許侵害を理由に訴えられました。この訴訟は競合他社の本国で提起されたものであり、クライアントは、商業的に重要な欧州市場において競合他社の申請に基づく仮処分命令を受ける可能性に直面していました。クライアントは、この訴訟に応訴するとともに、競合他社の対象特許を取り消そうとしていました。そのため、欧州特許庁に対して異議申立てをするととともに、欧州の主要な国でも特許無効化のための手続を行うことが決定されました。この結果、紛争はエスカレートし、国内裁判所での侵害訴訟はさらに激化しました。

対応

この一連の手続に対応するため、最初の仮処分手続が係属中の国のネイティブスピーカーを含む化学分野の弁理士チームが結成されました。当事務所は、メインとなる欧州特許庁での手続を担当するとともに、各国における訴訟手続を統括しました。その際は、各国裁判所で提示されたクライアントの主張、議論の一貫性を確保するため、訴訟手続が進行中の国の現地弁護士と緊密に連絡を取り合いました。対象分野における技術的なバックグランドを持たない現地弁護士が訴訟手続を処理している国に関しては、当事務所が技術的側面についてその弁護士チームにサポートとアドバイスを提供しました。

成果

仮処分命令の発令自体は回避できませんでしたが、上訴段階において仮処分命令の取消しに成功しました。欧州特許庁の異議手続でも、特許を取り消すことに成功し、この判断はその後の欧州特許庁の審判部でも是認されました。この異議申立事件は、当事務所が手続の迅速処理を強く働き掛け、大幅なスピードアップを実現したことで、これまでの欧州特許庁での異議申立事件の中で最も早く処理、判断されたケースの一つとなりました。この事件は、国内裁判所の証拠開示手続を通じて得られた証拠について、当該国内裁判所において関連性の判断が下される前に、欧州特許庁での手続に利用するために公開されたという点でも注目に値するものでした。通常、証拠開示手続で得られた証拠は非公開とされるため、これは極めて異例なことでした。

このプロジェクトの担当者

Morten Garberg

M.Sc. (Chemistry), British, Irish and European Patent Attorney, UPC Representative

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Thorsten Bausch

Dr. rer. nat., Dipl.-Chem., German and European Patent Attorney, UPC Representative

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