事例紹介:

欧州への市場参入の保護

課題

クライアントは、自動車産業向けに特殊コーティング剤を提供している海外企業です。第三者が保有する欧州特許に基づく独占的ライセンシーが、複数のヨーロッパの国において、クライアントの現地販売代理店各社に対し、特許侵害の警告書を送付してきました。クライアントは、当該第三者特許には無効事由があるものの、非侵害の主張は容易ではないと考えていました。クライアントは欧州市場での活動を拡大する計画を持っていたところ、とりわけ特許侵害と特許無効が別々の裁判所で審理・判断されるドイツの2トラックシステムの下では、最終的に特許無効が認められる可能性が高いにも関わらず、その無効判断が出される前に差止命令が出されてしまうのではないかと懸念していました。 

対応

国際案件の経験が豊富な特許訴訟・ライセンスチームの弁護士と、同じく訴訟経験の豊富な弁理士が共同で本プロジェクトを指揮しました。さらに弁護士1名と弁理士1名も本プロジェクトに関与しました。

成果

ドイツの2トラックシステム下で生じうるクライアントへの不利益を避けるため、ドイツの連邦特許裁判所(German Federal Patent Court, "FPC")に直ちに無効訴訟を提起しました。さらに、イタリアの裁判所の判例法に基づき、主張されている欧州特許全てのイタリア国内部分について、イタリアで特許権非侵害確認(Declaration of Non-Infringement, "DNI")の手続を開始しました。民事訴訟手続に関するEU法の規定により、特許権者や独占的ライセンシーがイタリア訴訟係属中に別途ドイツで侵害訴訟を提起することは、必ずしも容易ではありませんでした。FPCが対象特許には特許性がなく無効事由があるとの予備的見解を示した後、特許権者は特許の無効化を受け入れました。特許無効との前提で、その後、独占的ライセンシーとの間で和解が成立しました。クライアントのこれらの訴訟活動は積極的に市場に発信されており、結果的にクライアントは混乱なく欧州市場に参入することができました。